2015年9月3日木曜日

米国がシリアを打倒するためにアルカイダを「使用」したことが立証された

以下の文はランドデストロイヤー・レポートに2015年9月2日に掲載されたトニー・カルタルッチによる Confirmed: US to "Use" Al Qaeda to Take Syria を訳したものです。(アクセス9月3日)
 http://landdestroyer.blogspot.com.au/2015/09/confirmed-us-to-use-al-qaeda-to-take.html

(注:原文の写真とその説明は除かれています。) 

2007年以来報告されていたことが米軍指導層の高官によって確認された。米国はアルカイダを養成し、今や公にそれを使ってシリア政権の転覆を図っている。

デイリービーストに掲載された「ぺトレイアスはISIS打倒のためにアルカイダ戦闘員を使う」という記事は「安全避難区域」または「緩衝地帯」パズルの最後の一片を明らかにし、完成図を知らしめることとなった。米国がトルコ、サウジアラビア、イスラエル、ヨルダンその他の地域同盟国と共に、今度こそダマスカス政府を転覆させ、国家として機能するシリアを抹殺するためにテロ団体のリストに載っている10年に渡る破滅的な世界中での紛争に責任のある者らを使うという計画だ。

デイリービースト・レポート

シリア内のアルカイダ支部のメンバーにはアメリカの権力の回廊に意外な擁護者がいる。引退した陸軍大将で元CIA長官であったデヴィッド・ぺトレイアスである。
イラクとアフガニスタンの元米軍司令官はひそかに米高官らに、アルカイダのヌスラ戦線のいわゆる穏健派メンバーをシリアでのISISとの戦いに使うことを考慮するよう促している。これは彼と直接話した者も含める、この会話について知っている四つの情報源がデイリービーストに語ったことである。

 デイリービーストは、ぺトレイアスの計画とされているものに加え、元米国シリア大使であったロバート・フォードもアハラール・アル・シャム(アッシャム)派を含むアルカイダと直接繋がっているテロリストを支援することを提唱していると報告している。ただ、この「提案された」支援は事後の補足に過ぎず、大衆の認知管理でしかない。というのも、アハラール・アル・シャムやヌスラ戦線のようなテロ組織はすでに米国の顕著な支援を直接、またはこの地域の多くの協力国のひとつを通すことで出所を隠しながら与えられてきたからだ。

アハラール・アル・シャムのインターネット上の多くのビデオ記録は、このグループが米の対戦車TOWミサイルをも用いていることを示している。さらに、米企業・投資家が資金を出しているブルッキングス研究所などのシンクタンクはすでにこの計画そのものを数値化している。 ブルッキングスの「混沌から秩序へ」というブログに最近掲載された「米国はテロリストと交渉すべきか」と題する発行物には、

軍事展開に消極的であるならば、最終的には過激派との交渉と恩赦プログラムが米国の対テロリズムのレパートリーに取り入れられるべきである。
とある。


 ブルッキングスはぺトレイアスとフォードが提案したことを殆どそのまま一字一句書き表している。このことは、この計画がデイリービーストで示されたよりもより深く政策として根を下ろしていることを意味する。

これは初めからある計画だった

実際、デイリービーストの衝撃的な事実承認は真実の全てではない。米国は2007年にさかのぼるころから代理戦を行う目的で、シリアのムスリム同胞団、アルカイダその他の強硬派閥主義武装団体を使ってシリアを武力によって転覆させ、最終的には直接、対イラン戦を行うことを企てていたというのが事実だ。
ピューリッツァー 賞受賞ジャーナリスト、シーモア・ハーシュの2007年のニューヨーカーの文「方向転換:政府の新しい方針は対テロ戦争で敵を利することになるか?」では、それが明確に述べられている。(文字に強調が加えられている)

大多数がシーア派であるイランを弱体化させるためにブッシュ政権は中東での優先順位を実質的に再編成することを決めた。レバノンではこの政権はイランに支援されたシーア派の組織ヒズボッラーを弱めることを目的とした極秘作戦でスンニ派であるサウジアラビアの政府と協力した。米国はまた、イランとその同盟国であるシリアを狙った極秘作戦にも参加した。これらの活動の副産物は、イスラムの好戦的な見方を信奉し、アメリカに敵対的でアルカイダに共感するスンニ過激派を増長させたことだ。 

これに加えて、米国に本拠を置き政府の「透明化」を求めるジュデイシャル・ウオッチが2012年に発表した7ページの文書はシリア紛争の背景と情勢について詳しく述べている。そこではシリアの「反政府勢力」の基盤をなすのがムスリム同胞団とアルカイダであることが認められている。そして次のことも認めた。(文字に強調が加えられている)

現在起こっていることは代理戦争へと発展した。ロシア、中国とイランに支援されたシリア政府は勢力範囲の沿岸地域(タルトゥスとラタキア)を支配下に置き、シリアの主要輸送ルートであるホムスで激しい攻防を行っている。もう一方の反乱勢力はトルコとの国境地帯に加え、東部地域(ハサカとデル・ゾル)、西イラク地方と隣接している地域(モスルとアンバー)を支配下に置こうとしており、これを西欧諸国、湾岸諸国とトルコが支援している。

この文書はテロリストがイラクからシリアに入ってきており、いわゆる「内戦」などというものではなく明らかに侵略であるであることも認めている。さらに重要なのはこの文書が次のように認めていることだ。(文字の強調が加えられている)

反政府勢力はイラク国境地帯の人々が共感していることをいいことにイラクの領地を安全避難場所として使おうとしている。イラク領土内で(シリア)難民をかくまうのに加え、戦闘員のリクルートと訓練もしている。

もしもシリア東部(ハサカとデル・ゾル)に宣言されたまたは宣言なしのサラフィスト統治国が成立する可能性があるという状況が明らかになったとすれば、それこそが反対勢力を支援してきた大国らがシーアの拡張(イラクとイラン)の戦略的縦深であるシリア政権を孤立化するために望んでいたことなのだ。

これはアメリカとその同盟国がアルカイダをシリアとイラクと戦う代理として使うことを望んでいたというだけでなく「サラフィスト統治国」を特にシリア東部に作ることを望んでいたことを明らかにした。現在「イスラム国」が存在するのと全く同じ場所である。

デイリービーストの記事はこの立証された陰謀の最新の確認であり、アルカイダの養成と使用、そしていわゆる「イスラム国」(ISIS)が、西欧の直接軍事介入では成功することができないシリア国家転覆を非正規非対称戦争で行うための、あらかじめ塾考された作戦であったということは殆ど疑いの余地がない。

ISISに空軍を与える

デイリービーストの読者はこれらの過激派がすでにずっと西欧諸国から武器を与えられてきたという事実を知らずに、米国が彼らに武器を与え始める、またはすでにある支援を増やすのだと思おうとするであろう。しかし、これらの思い込みは両方とも間違っている。米国とその協力国らがシリアの紛争につぎ込むためにこの世で見つけることのできるすべてのドル、すべての武器、そしてすべての外国人戦闘員はすでに調達され、シリアに送り込まれている。単にそれが十分でなかったということだ。

そしてリビアでNATOの地上軍、実質的には米国がリストに載せている外国テロリストグループの「リビア・イスラム闘争グループ」(LIFG)が彼ら自身で極秘支援のみでこの国を獲得できなかったときと同じように、代理地上軍が結果を出せなかったときに取りうる唯一の選択肢は彼らに上空援護、特別軍作戦、海軍支援、信号と諜報網を含む直接軍事援助を与えることだ。

リビアではNATOの空軍力使用が紛争のバランスをアルカイダのLIFG派に決定的に有利に傾け、ついにトリポリの政府を打倒するに至った。以来この北アフリカの国はこれらの過激派の手に委ねられている。

リビアは米国とNATOがシリア自体を含む中東と北アフリカの国々を侵略するための跳躍台として機能することになる

シリアでの欧米の地上代理軍は軍事作戦能力に限りがあり、いまだに究極の目的であるシリア政府の打倒は達成されていない。欧米が今やより直接的な介入を準備していることは明白だ。シリア内で戦っているISISとアルカイダ軍に動力を供給するための最終的な後方回廊地帯がシリア北部にすでに「安全避難地域」または「緩衝地帯」として指定されている。欧米はこの地帯が難民と「穏健派」戦闘員のための保護区域として使われると主張しているが、デイリービーストとブルッキングスの報告書により、そのような「穏健派」が存在しないことは明らかだ。そのかわりにこの「安全非難地域」は米国、NATO、ペルシャ湾岸の空軍力と特別部隊に保護された、アルカイダ/ISISの最後の避難場所として使われることになる。

そこから実質的に飛行禁止区域となるものが南方に拡大されて、これらのテロリスト軍が何年も続いている紛争に最終目的であるリビア型のフィナーレをもたらすため、より効果的により深くシリア地域に入り込んで作戦を行うとき、彼らに保護を提供することになる。

つまり、米国とその同盟国らはアルカイダ/ISISに紛争のバランスが彼らに有利になるよう空軍を提供する準備をしているということだ。
ISISプロパガンダは世間がアルカイダを好ましく思うように仕向けられている。

米国とサウジアラビアは1980年代にアルカイダを当初彼らのために代理戦を戦う同盟勢力と考えていた。最初がアフガニスタンで対ソ連、過去十年はこのテロリスト組織を直接の代理ではなく世界規模の軍事紛争の口実として使って民衆の認識を悪化させた。アルカイダを再び「自由の戦士」に配役しなおすためにISISは意図的に自らを今まで地球上に存在したももののどれよりも過激で残虐であると描き出すためのプロパガンダ・キャンペーンを仕掛けたと思われる。
これには多くの資金をつぎ込みプロの手で製作された今までになくクリエィテイブな、しかしISISの捕虜となった者らに対する恐るべき残虐行為を映し出している製作物を含む。これにはまたローマ寺院などのシリアの歴史的遺跡の組織的で悲劇的な破壊とそれらを研究し保護していた尊敬されていた歴史家の処刑をも含んでいる。

ISISは世間を彼らに敵対させるべく意図的に挑発する努力をし、それによってアルカイダを比較的「穏健派」へと再配役する手助けをした。欧米のメディアはISISの明らかなプロパガンダ・キャンペーンと並行してそれを助けようとした。すでに言及したブルッキングス・レポートは以下の内容を主張するほどだ。

戦略的レベルでは米国はマッチョの信条である「我々はテロリストと交渉することはしない」を堅持  している。9・11にツインタワーが崩壊した後の敵意が満ちていた対テロリズム世界戦争の頂点   だったころにはこの立場は気高く正しかった。しかし14年が過ぎた現在9月11日の残虐行為を   実行したアルカイダはアイマン・アル・ザワヒリと数名の残存する信奉者ら意外に殆ど存在してい  ない。減少しているアルカイダ系列団体数はこれらの攻撃を行った元々の実行者たちとの結びつ  きが少なくなっていることを示している。

2001年9月11日に3千人近くが米国の地で殺された。その後、この攻撃とアルカイダの「脅威」に基づいた戦争で1百万人ほどのイラク人が死亡し、何万人ものアフガニスタン人、そして4千人以上の米国とその他の同盟国兵士が10年以上に渡った世界戦争で殺された。運輸保安局(TSA)の創設と、アメリカ人一般大衆に対して課される範囲と介入度を増す安全方策もまたアルカイダの脅威を前提としている。

アメリカ中でこの世界戦争が生んだのは蔓延するパラノイアと放って置かれている帰還兵の破壊された身体と心、そして一見無害で存在しない脅威と戦うために人々と資源が奪われてきた国だ。米国は現在これを機能する常備軍にし、中東・北アフリカ地域中で国をひとつずつ占領する手助けをする準備ができている。

10年以上にわたって海外の国々とアメリカ人民自身両方に対して行われた残虐行為は一周して元に戻ってきた。米国が「対テロ戦争」を正当化するために当時挙げていた敵そのものから地域の戦線を創設するという陰謀は現在完全に実施に移されている。これは二つの大統領政権を超えた陰謀であり、アメリカの外交政策が選挙で選ばれた代表を通してアメリカの民衆の願望によって動くのではなく、選挙で選ばれることのない特殊権益によるものだという証拠であり、彼らがどのような筋書きにでも誘導して政策文書を書き、それがいつでも実施されることになる。

ブッシュ政権の時にはこの筋書きは「対テロ戦争」であり、オバマ政権の時には「人道主義戦争」である。実際は単一の継続する課題が途切れることなく現在まで進んできた。また今年も9・11記念日を迎えようという今、米メディアはアメリカの民衆と世界の一般の人々にアルカイダは「いいやつ」で、シリア国家を彼らの手に委ねさせるときが来た、と説得しようとしている。