この文章は2015年12月20日にグローバル・リサーチに掲載されたマディー・ダリウス・ナゼムロヤ(Mahdi Darius Nazemroaya)のTurkish-ISIL Oil Trade: The Role of Britain, Israel, and the Kurdistan Regional Government を訳したものです。(アクセス:2015年12月21日)
*投稿タイトルは題名の訳
トルコ政府当局者は、いわゆるイスラム国(ISIL/ISIS/IS/ダーイシュ)が出現するずっと前から、イラクからの不法な石油輸送に関わってきた。この不法取引は、シリアでの紛争が激化する中、シリア・アラブ共和国に拡大した。しかしトルコは、シリアとイラクでの不法石油取引に関わる唯一の国ではない。英国とトルコの会社、ジェネル・エネルギー公開有限責任株式会社(Genel Energy PLC)はイラク・クルジスタンとマルタにあり、この会社の運営は、関わっている金融とエネルギー部門の利権構造を浮きあがらせる。
ジェネラル・エネルギー(株)
ジェネル・エネルギーは英チャンネル諸島の王室属領である、ジャージー代官管轄区に本社を置く。ここは英国君主が英国や、その海外領土とは別の形態で統治するオフショア(海外)タックスヘイブン(避税地域)である。この、ジャージーを拠点とするエネルギー会社は、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・カザノブの関与により、2011年にジェネル・エネルジ・インターナショナル(有)が投資会社のヴァラリス(Vallares PLC)に25億ポンドの逆さ合併買収されてから浮上した。この投資会社は、BP(イギリス石油会社)複合企業体の元重役、アンソニー(トニー)・ブライアン・ヘイワードと、JNR(有)(JNR Limited)の資本家で、銀行業界の有力一族の御曹司、ナタニエル(ナット)・ロスチャイルド、そしてナットの資本家のいとこ、トマス(トム)・ダニエル、ドレスナークレインウォートとゴールドマンサックスの投資銀行家のジュリアン・メセレルによって設立された。
ジェネル・エネルギーは英チャンネル諸島の王室属領である、ジャージー代官管轄区に本社を置く。ここは英国君主が英国や、その海外領土とは別の形態で統治するオフショア(海外)タックスヘイブン(避税地域)である。この、ジャージーを拠点とするエネルギー会社は、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・カザノブの関与により、2011年にジェネル・エネルジ・インターナショナル(有)が投資会社のヴァラリス(Vallares PLC)に25億ポンドの逆さ合併買収されてから浮上した。この投資会社は、BP(イギリス石油会社)複合企業体の元重役、アンソニー(トニー)・ブライアン・ヘイワードと、JNR(有)(JNR Limited)の資本家で、銀行業界の有力一族の御曹司、ナタニエル(ナット)・ロスチャイルド、そしてナットの資本家のいとこ、トマス(トム)・ダニエル、ドレスナークレインウォートとゴールドマンサックスの投資銀行家のジュリアン・メセレルによって設立された。
ヴァラリスは、以前にジャージーで法人格を取得した、アジア資源鉱物株式会社(Asia Resource Minerals PLC)、ヴァラール(後に BUMI PLC)をモデルにしている。ヴァラール(Vallar )はナット・ロスチャイルドとトム・ダニエルが共同で設立し、2010年の新規株式公開額は7億720万ポンドに上った。2011年の6月、ヘイワード、ロスチャイルド、ダニエルとメセレルは、ヴァラリスとジェネル・エナジー取引のための資金13.5億ポンド(または22億ドル)をすばやく調達した。この資金の半分は、このジャージーに本拠を置く会社の新規株式公開時に米国の投資家から出されたものと、シュローダーズなどの英国の資産運用会社やロイド銀行の子会社、スコティッシュ・ウィドウズといった会社からの関連投資だ。
トルコで最もお金持ちの2人であるひとり、トルコの億万長者で実業界の大物銀行家のメフメット・エミン・カラメフメットは、この取引中に、公金横領罪で12年の刑に対する上告をしていた。もうひとりは、ジェネル・エナジーの最高経営責任者(CEO)メフメット・セピルで、2010年の2月に、ヘリテージ石油株のインサイダー取引で、英国金融サービス機構に摘発され、罰金を科された。この2人は新しい会社の半分をそれぞれ4分の1ずつあてがわれ、この取引で、さらに12.5億ポンドの株を発行した。
ジェネル・エナジーの重役会には、メフメット・カラメフメットを彼の娘のグルスン・ナズリ・カラメフメット・ウィリアムズが代表し、セピルはヤズィジ弁護士事務所の弁護士ムラット・ヤズィジが代表することで同意した。ヤズィジは以前、1974年から1989年の間に、ロイヤル・ダッチ・シェル、トルコ石油会社(TPAO)、エクソンの弁護士をしていた。セピルはジェネル・エナジーの社長に任命され、「重要な政策立案者の役割」が与えられた。メセレルが言うところの、セピルの「クルジスタンに関するユニークな知識」によって「指導層の重要なメンバー」となった。
もと英国石油(BP)の幹部で、ジャージーを本拠とする、ペトロファク油田サービス会社の会長であるロドニー・チェイスと、元トルコでの米大使、マーク・パリスも、この新しい会社に参加していると報告されている。
戦争と利益
これは2011年のジェネル・エナジーの予測生産量である。<<ジェネルは貴重なクルジスタンの油田を保有しており、トルコ市場に向けて、現在一日に4万2千バレルを生産している。元BPの幹部、最高経営責任者のヘイワード氏率いる新たな経営により、生産量を倍にすることを計画している。「我々は2012年までに一日11万バレルを生産することを望んでおり、2015年までには15万バレルを予期している」とメセレル氏は述べた>>。
この予測要素として、戦争の悪化とシリアの油田の不法占拠は予見されていただろうか。この、英国とトルコのエネルギー会社が、イラクの石油のイスラエルへの不法な輸出に関わっていたことは特筆に価する。この会社は、東地中海のエネルギー基盤をイスラエルとトルコに融合させようとしているようだ。2012年には、「レバノンでの石油とガスの探査を担う複合企業体と連携する取引について発表する計画をしていた」。
この後者ふたつの目的については、シリアで政権交代があり、シリアとレバノンで融和的な政府が成立することによってのみ実現可能になる。ナット・ロスチャイルドが英国のジャーナリスト、サイモン・グッドレイにした発言で特筆すべきことは、世界の中の特定の場所、ベネズエラや旧ソ連圏の中央アジアなどの場所は、ジェネル・エナジーの権限外に存在し、この英とトルコの会社の運営には地政学的な競争が考慮されていることを認めたことだ。
南アフリカのジャーナリスト、カリーン・ペック (Khareen Pech) によれば、これらの連結した重役職と会社は、危機的状況と戦争によって利益を得ている迷路状のネットワークの一部である。この脈絡から、以前に行われたジェネル・エナジーとヘリテージ石油の合併は厳密に調査されるべきだ。ヘリテージもまた、英チャンネル諸島を本拠とするオフショア会社で、英国軍と関係のある傭兵らによって設立され、2009年に破綻した。
ヘリテージ石油とガスの説明として、ペックは、
ロンドンには同じような系列の会社が、プラザ107にあるヘリテージ石油とブランチ・エナジーの事務所にある。この続き部屋には15以上の会社が運営しており、電話番号と、英国を拠点とする重役と人員を共有している。この秘密のビジネス方針は、EO(エグゼクティブ・アウトカム)と、その英国の主導者らが、企業と軍事会社の隠れた帝国から利益を得ることを可能にしている。
と述べている。
図1:レバントのエネルギー回廊
分割に資金提供:イラク・クルジスタンと、キルクークからケイハンへのパイプライン
2009年に、ジェネル・エネルギーのトルコでの前身であったジェネル・エネルジは、キルクークからジェイハンへのパイプラインが開通したことにより、イラク・クルジスタンからトルコ海岸の石油探索を開始した。ジェイハン港はボタス・インターナショナル・リミテッドによって運営されている。このトルコ国営会社はまた、バクー、トビリシ、ジェイハンを結ぶパイプラインのトルコ領内での運営もしている。このパイプラインは意図的にロシアとイランを回避して、カスピ海の石油をアゼルバイジャン共和国からジョージアとトルコを経由して輸出している。
ロイターによれば、当たり障りのない言葉を用いて、この運営が実質的に違法であることを隠しているが、この「トルコの港、ジェイハンへの輸出ルートは、バグダッドの連邦パイプライン・システムを回避しており」イラク内で「石油発売権をめぐる厳しい対立を生じさせた」。
図2:キルクーク、ジェイハン間パイプライン
2002年以来、このトルコの会社は、不法にイラク・クルジスタンに侵食し、地元のクルド首長らと、イラクのバグダッド政府とイラク石油マーケテイング機構(SOMO)を回避する違法な貿易協定を結ぶことによって、この地域のエネルギー基盤設備をゆっくりとトルコに統合してきた。
2011年には、エクソン・モービルとクルジスタン地域政府間の取引が類似の状況下にある中、英国政府の援助の下、ヘイワード、ロスチャイルド、ダニエル、そしてメセレルが、断固として、彼らの「お金と労力を、イラクの連邦政府による締結なしに(イラク)クルジスタンで獲得した採油権につぎ込んでいる」とガーデイアン誌も書いて指摘している。
経済的な見地と実際面で、ジェネル・エナジーは中東とアフリカのバルカン化を支援している。これは、離反共和国や分離独立の動きに収入をもたらすことによってである。トルコから不法に輸出されている石油はクルジスタン地域政府に資金を供給し、クルジスタン地域政府の大統領であるマスード・バルザ二が、イラク連邦政府の憲法に基づく権力を拒否する手助けをしている。
ジェネル・エナジーは、企業資料で自らを「クルド地域のパートナー」とすら述べている。この英国とトルコの会社は、この件に関連して、1991年の5月18日にソマリアからの独立を宣言した、分離共和国ソマリランドの承認されていない政府から、探査権を確保している。
イスラエル関係とジェイハン港
イスラエルの首相ベンジャミン・ナタニヤフがマスード・バルザ二のキルクークや他の係争中の領土獲得を支援したのも偶然ではない。バルザ二とナタニヤフは2014年に、同時にイラク・クルジスタンの独立を提唱しさえした。実際、トルコとジェネル・エネルギーの助けによって、クルド・地域政府は、そのトルコとのエネルギー関係を使って、キルクーク・ジェイハン・パイプラインで石油をイスラエルに輸送した。
英国石油(BP)やエクソン・モービルのような巨大な石油複合企業体は、現存するイラクとの協定を脅かす可能性から、この石油を公に買うことを恐れていた。そこで、クルド地域政府の天然資源大臣、アシュティ・ハウラミによれば、イスラエルとマルタが、イラクからの密輸石油が検知されるのを回避するための主要な役割を担うことになった。
ロイターは2014年6月20日に以下の報告をした。
金曜日に初めて、イラク・クルジスタンの新しいパイプラインからの原油がタンカーからイスラエルに荷揚げされた。イラク政府がこれを購買したものは誰であろうと法的な措置を取ると脅しているにもかかわらず、である。
ロイターはまた、イラク連邦政府の支配するエネルギーパイプラインのネットワークをバイパスしたキルクークとジェイハン間のパイプラインからの石油を販売することは、クルジスタン地域政府が、「戦火に引き裂かれたイラクからより大きな財政上の独立を推進する上で」 欠かせない、と説明している。
ジョージ・キオルクツォグロウとアレック D.コウトロービスの著述によるグリーンウィッチ大学の研究の結論によれば、ジェイハン港からの石油輸出にはイラクとシリアからトルコに密輸された石油が含まれている。この研究の、ジェイハンからの輸出データ分析によれば、2014年からは、この「タンカーチャーター率は、他の中東のチャーター率とかなり、再結合している」。この報告書の著者は、輸出の増加が「ISILの石油の密輸が増大したことと関係して、ジェイハン経由の(イラク・クルジスタンの)原油輸出が追加されたため」、または、「激安密輸原油に対する需要が上昇した結果」だという結論には到達していないが、この両方によるものだということは、確信を持って算定することができる。
キオルクツォグロウとコウトロービスはまた、ジェイハン「港のタンカーチャーター率と並行して行った」ISISとの戦いを時系列で表示した「研究によれば」、「イスラム国が石油施設のある地域の近辺で戦っているときには常に、ジェイハンからの輸出が急上昇するように見える」が、これは「砲弾や軍装備品供給のためにひどく必要とされている追加資金を緊急に作り出すために原油の密輸がさらに上昇したことによるようだ」と指摘している。
トルコがISILのために売っている石油はクルド地域政府がイラクから不法に売っている石油に偽装されている。実際、ISILはシリアの盗掘された石油をイラクの二ナワ行政区に輸送し、近距離のモスル市からトルコに密輸しており、そこから再輸出するためにジェイハンに輸送される。トルコのモスル地区での軍事展開と、そこに恒久的な軍事基地を設置しようという計画は、これらの石油ルートを保護し、同時に、クルド地域政府によって不法に売られたイラクの石油の流れを維持し、ISILによって略奪されたシリアとイラクの石油を確保するためである。
*この文章はマディ・ダリウス・ナゼムロヤがストラトジック・カルチャー・ファウンデーションに掲載した一連の文章の第3部にあたる。第一部はこちら、そして第二部はこちらからアクセスできる。この文章は続編が掲載される予定である。
This article was originally published by the Strategic Culture Foundation on December 19, 2015.
The original source of this article is Strategic Culture Foundation
Copyright © Mahdi Darius Nazemroaya, Strategic Culture Foundation, 2015