2015年12月25日金曜日

トルコとISILの石油取引における、英国、イスラエル、クルド地域政府の役割

この文章は2015年12月20日にグローバル・リサーチに掲載されたマディー・ダリウス・ナゼムロヤ(Mahdi Darius Nazemroaya)のTurkish-ISIL Oil Trade: The Role of Britain, Israel, and the Kurdistan Regional Government を訳したものです。(アクセス:2015年12月21日)

*投稿タイトルは題名の訳

トルコ政府当局者は、いわゆるイスラム国(ISIL/ISIS/IS/ダーイシュ)が出現するずっと前から、イラクからの不法な石油輸送に関わってきた。この不法取引は、シリアでの紛争が激化する中、シリア・アラブ共和国に拡大した。しかしトルコは、シリアとイラクでの不法石油取引に関わる唯一の国ではない。英国とトルコの会社、ジェネル・エネルギー公開有限責任株式会社(Genel Energy PLC)はイラク・クルジスタンとマルタにあり、この会社の運営は、関わっている金融とエネルギー部門の利権構造を浮きあがらせる。

ジェネラル・エネルギー(株)

ジェネル・エネルギーは英チャンネル諸島の王室属領である、ジャージー代官管轄区に本社を置く。ここは英国君主が英国や、その海外領土とは別の形態で統治するオフショア(海外)タックスヘイブン(避税地域)である。この、ジャージーを拠点とするエネルギー会社は、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・カザノブの関与により、2011年にジェネル・エネルジ・インターナショナル(有)が投資会社のヴァラリス(Vallares PLC)に25億ポンドの逆さ合併買収されてから浮上した。この投資会社は、BP(イギリス石油会社)複合企業体の元重役、アンソニー(トニー)・ブライアン・ヘイワードと、JNR(有)(JNR Limited)の資本家で、銀行業界の有力一族の御曹司、ナタニエル(ナット)・ロスチャイルド、そしてナットの資本家のいとこ、トマス(トム)・ダニエル、ドレスナークレインウォートとゴールドマンサックスの投資銀行家のジュリアン・メセレルによって設立された。

ヴァラリスは、以前にジャージーで法人格を取得した、アジア資源鉱物株式会社(Asia Resource Minerals PLC)、ヴァラール(後に BUMI PLC)をモデルにしている。ヴァラール(Vallar )はナット・ロスチャイルドとトム・ダニエルが共同で設立し、2010年の新規株式公開額は7億720万ポンドに上った。2011年の6月、ヘイワード、ロスチャイルド、ダニエルとメセレルは、ヴァラリスとジェネル・エナジー取引のための資金13.5億ポンド(または22億ドル)をすばやく調達した。この資金の半分は、このジャージーに本拠を置く会社の新規株式公開時に米国の投資家から出されたものと、シュローダーズなどの英国の資産運用会社やロイド銀行の子会社、スコティッシュ・ウィドウズといった会社からの関連投資だ。

トルコで最もお金持ちの2人であるひとり、トルコの億万長者で実業界の大物銀行家のメフメット・エミン・カラメフメットは、この取引中に、公金横領罪で12年の刑に対する上告をしていた。もうひとりは、ジェネル・エナジーの最高経営責任者(CEO)メフメット・セピルで、2010年の2月に、ヘリテージ石油株のインサイダー取引で、英国金融サービス機構に摘発され、罰金を科された。この2人は新しい会社の半分をそれぞれ4分の1ずつあてがわれ、この取引で、さらに12.5億ポンドの株を発行した。

ジェネル・エナジーの重役会には、メフメット・カラメフメットを彼の娘のグルスン・ナズリ・カラメフメット・ウィリアムズが代表し、セピルはヤズィジ弁護士事務所の弁護士ムラット・ヤズィジが代表することで同意した。ヤズィジは以前、1974年から1989年の間に、ロイヤル・ダッチ・シェル、トルコ石油会社(TPAO)、エクソンの弁護士をしていた。セピルはジェネル・エナジーの社長に任命され、「重要な政策立案者の役割」が与えられた。メセレルが言うところの、セピルの「クルジスタンに関するユニークな知識」によって「指導層の重要なメンバー」となった。

もと英国石油(BP)の幹部で、ジャージーを本拠とする、ペトロファク油田サービス会社の会長であるロドニー・チェイスと、元トルコでの米大使、マーク・パリスも、この新しい会社に参加していると報告されている。

戦争と利益

これは2011年のジェネル・エナジーの予測生産量である。<<ジェネルは貴重なクルジスタンの油田を保有しており、トルコ市場に向けて、現在一日に4万2千バレルを生産している。元BPの幹部、最高経営責任者のヘイワード氏率いる新たな経営により、生産量を倍にすることを計画している。「我々は2012年までに一日11万バレルを生産することを望んでおり、2015年までには15万バレルを予期している」とメセレル氏は述べた>>。

 この予測要素として、戦争の悪化とシリアの油田の不法占拠は予見されていただろうか。この、英国とトルコのエネルギー会社が、イラクの石油のイスラエルへの不法な輸出に関わっていたことは特筆に価する。この会社は、東地中海のエネルギー基盤をイスラエルとトルコに融合させようとしているようだ。2012年には、「レバノンでの石油とガスの探査を担う複合企業体と連携する取引について発表する計画をしていた」。

この後者ふたつの目的については、シリアで政権交代があり、シリアとレバノンで融和的な政府が成立することによってのみ実現可能になる。ナット・ロスチャイルドが英国のジャーナリスト、サイモン・グッドレイにした発言で特筆すべきことは、世界の中の特定の場所、ベネズエラや旧ソ連圏の中央アジアなどの場所は、ジェネル・エナジーの権限外に存在し、この英とトルコの会社の運営には地政学的な競争が考慮されていることを認めたことだ。

南アフリカのジャーナリスト、カリーン・ペック  (Khareen Pech) によれば、これらの連結した重役職と会社は、危機的状況と戦争によって利益を得ている迷路状のネットワークの一部である。この脈絡から、以前に行われたジェネル・エナジーとヘリテージ石油の合併は厳密に調査されるべきだ。ヘリテージもまた、英チャンネル諸島を本拠とするオフショア会社で、英国軍と関係のある傭兵らによって設立され、2009年に破綻した。

ヘリテージ石油とガスの説明として、ペックは、

ロンドンには同じような系列の会社が、プラザ107にあるヘリテージ石油とブランチ・エナジーの事務所にある。この続き部屋には15以上の会社が運営しており、電話番号と、英国を拠点とする重役と人員を共有している。この秘密のビジネス方針は、EO(エグゼクティブ・アウトカム)と、その英国の主導者らが、企業と軍事会社の隠れた帝国から利益を得ることを可能にしている。

と述べている。

図1:レバントのエネルギー回廊

分割に資金提供:イラク・クルジスタンと、キルクークからケイハンへのパイプライン

2009年に、ジェネル・エネルギーのトルコでの前身であったジェネル・エネルジは、キルクークからジェイハンへのパイプラインが開通したことにより、イラク・クルジスタンからトルコ海岸の石油探索を開始した。ジェイハン港はボタス・インターナショナル・リミテッドによって運営されている。このトルコ国営会社はまた、バクー、トビリシ、ジェイハンを結ぶパイプラインのトルコ領内での運営もしている。このパイプラインは意図的にロシアとイランを回避して、カスピ海の石油をアゼルバイジャン共和国からジョージアとトルコを経由して輸出している。

ロイターによれば、当たり障りのない言葉を用いて、この運営が実質的に違法であることを隠しているが、この「トルコの港、ジェイハンへの輸出ルートは、バグダッドの連邦パイプライン・システムを回避しており」イラク内で「石油発売権をめぐる厳しい対立を生じさせた」。

図2:キルクーク、ジェイハン間パイプライン

2002年以来、このトルコの会社は、不法にイラク・クルジスタンに侵食し、地元のクルド首長らと、イラクのバグダッド政府とイラク石油マーケテイング機構(SOMO)を回避する違法な貿易協定を結ぶことによって、この地域のエネルギー基盤設備をゆっくりとトルコに統合してきた。

2011年には、エクソン・モービルとクルジスタン地域政府間の取引が類似の状況下にある中、英国政府の援助の下、ヘイワード、ロスチャイルド、ダニエル、そしてメセレルが、断固として、彼らの「お金と労力を、イラクの連邦政府による締結なしに(イラク)クルジスタンで獲得した採油権につぎ込んでいる」とガーデイアン誌も書いて指摘している

経済的な見地と実際面で、ジェネル・エナジーは中東とアフリカのバルカン化を支援している。これは、離反共和国や分離独立の動きに収入をもたらすことによってである。トルコから不法に輸出されている石油はクルジスタン地域政府に資金を供給し、クルジスタン地域政府の大統領であるマスード・バルザ二が、イラク連邦政府の憲法に基づく権力を拒否する手助けをしている。

ジェネル・エナジーは、企業資料で自らを「クルド地域のパートナー」とすら述べている。この英国とトルコの会社は、この件に関連して、1991年の5月18日にソマリアからの独立を宣言した、分離共和国ソマリランドの承認されていない政府から、探査権を確保している

イスラエル関係とジェイハン港

イスラエルの首相ベンジャミン・ナタニヤフがマスード・バルザ二のキルクークや他の係争中の領土獲得を支援したのも偶然ではない。バルザ二とナタニヤフは2014年に、同時にイラク・クルジスタンの独立を提唱しさえした。実際、トルコとジェネル・エネルギーの助けによって、クルド・地域政府は、そのトルコとのエネルギー関係を使って、キルクーク・ジェイハン・パイプラインで石油をイスラエルに輸送した。

英国石油(BP)やエクソン・モービルのような巨大な石油複合企業体は、現存するイラクとの協定を脅かす可能性から、この石油を公に買うことを恐れていた。そこで、クルド地域政府の天然資源大臣、アシュティ・ハウラミによれば、イスラエルとマルタが、イラクからの密輸石油が検知されるのを回避するための主要な役割を担うことになった。

ロイターは2014年6月20日に以下の報告をした

金曜日に初めて、イラク・クルジスタンの新しいパイプラインからの原油がタンカーからイスラエルに荷揚げされた。イラク政府がこれを購買したものは誰であろうと法的な措置を取ると脅しているにもかかわらず、である。

ロイターはまた、イラク連邦政府の支配するエネルギーパイプラインのネットワークをバイパスしたキルクークとジェイハン間のパイプラインからの石油を販売することは、クルジスタン地域政府が、「戦火に引き裂かれたイラクからより大きな財政上の独立を推進する上で」 欠かせない、と説明している。

ジョージ・キオルクツォグロウとアレック D.コウトロービスの著述によるグリーンウィッチ大学の研究の結論によれば、ジェイハン港からの石油輸出にはイラクとシリアからトルコに密輸された石油が含まれている。この研究の、ジェイハンからの輸出データ分析によれば、2014年からは、この「タンカーチャーター率は、他の中東のチャーター率とかなり、再結合している」。この報告書の著者は、輸出の増加が「ISILの石油の密輸が増大したことと関係して、ジェイハン経由の(イラク・クルジスタンの)原油輸出が追加されたため」、または、「激安密輸原油に対する需要が上昇した結果」だという結論には到達していないが、この両方によるものだということは、確信を持って算定することができる。

キオルクツォグロウとコウトロービスはまた、ジェイハン「港のタンカーチャーター率と並行して行った」ISISとの戦いを時系列で表示した「研究によれば」「イスラム国が石油施設のある地域の近辺で戦っているときには常に、ジェイハンからの輸出が急上昇するように見える」が、これは「砲弾や軍装備品供給のためにひどく必要とされている追加資金を緊急に作り出すために原油の密輸がさらに上昇したことによるようだ」と指摘している。

トルコがISILのために売っている石油はクルド地域政府がイラクから不法に売っている石油に偽装されている。実際、ISILはシリアの盗掘された石油をイラクの二ナワ行政区に輸送し、近距離のモスル市からトルコに密輸しており、そこから再輸出するためにジェイハンに輸送される。トルコのモスル地区での軍事展開と、そこに恒久的な軍事基地を設置しようという計画は、これらの石油ルートを保護し、同時に、クルド地域政府によって不法に売られたイラクの石油の流れを維持し、ISILによって略奪されたシリアとイラクの石油を確保するためである。


*この文章はマディ・ダリウス・ナゼムロヤがストラトジック・カルチャー・ファウンデーションに掲載した一連の文章の第3部にあたる。第一部はこちら、そして第二部はこちらからアクセスできる。この文章は続編が掲載される予定である。

This article was originally published by the Strategic Culture Foundation on December 19, 2015.

2015年11月12日木曜日

なぜロシアはテロとの戦いに本気だが、米国は本気でないのか

以下は2015年10月20日にニューイースターンアウトルックに掲載された Maram Susli (別名シリアンガール) による Why Russia is Serious About Fighting Terrorism and the US Isn’t を訳したものです。(アクセス10月27日)





ロシアはテロリズムと戦い始めた数日のうちに、米国同盟が数年かけたよりも多くを成し遂げた。ニューヨークタイムスによれば、ロシアの戦闘機は普通一日で、米主導同盟が今年に入ってイラクとシリアの両方で毎月一ヶ月で行うのと同じ量の攻撃を行っている。

米国はISISに対する爆撃を一年以上行っているが、ISISはシリアでむしろその勢力を増し、領地も増やしている。数ヶ月前ISISはユネスコ世界遺産である古代の町パルミラを占領した。


米国政府は地上軍なしにはISISを淘汰することができないことを認めているにもかかわらずシリア軍と協力することを拒否している。シリア軍は国連が認めた唯一の正当(合法的)な地上軍であり、ISISと戦う能力と意思を持った唯一の軍隊である。それとは逆にロシアはシリアの地上軍と連携し、シリア部隊がテロと戦う支援をしている。

米国が公言しているテロリズムと戦うという目的と、その目的が達成されていないという事実は、シリアについて米国が本当の意図を正直に示していないことを意味する。米国は世界で最も強力で技術的に高度な軍隊を持つことから、これ以上のことをする能力がある。つまり彼らが意図的にシリアでの対テロ戦で勝たないようにしていると結論付けることができる。この理由についてはさらに追求されるべきだ。

ISISは米の地政学的利益にとってプラスだが、ロシアの利益は脅かす

シリアでの米の主要な目的は「ISISと戦う」という公言されたものではないことが明らかになってきた。彼らの目的は政権交代、ロシアの影響を孤立させる、シリアとイラクをバルカン化して破綻国家を作り出すことだ。米大統領候補で元国務長官のヒラリー・クリントン自身が最近述べたように、「アサドを除去することが最優先事項だ」。ISISとその他のテロリストグループの存在はこの方針に寄与する。

米国はシリア国家を、元ソビエト連合の国境外でロシアの勢力圏である最後の国々のひとつであり、この地域での米の同盟国イスラエルへの脅威と見ている。米はロシアに友好的な国を転覆させるためにテロリズムを用いてきた歴史がある。アルカイダ自体もソビエトに友好的なアフガニスタン政府を転覆する目的から生まれた。ロシアに友好的なセルビアの分割とコソボの創設も同じ手法でなされた。

より最近では、ISISは米のイラク戦の直接の結果であり、リビアとシリアでの米による公の政権交代支援により、この二国のみで定着した。リビアとイラクはシリアほどロシアとの関係が強かったわけではないが、この二国にとってロシアはまだ主要な武器供給国であった。だから、ロシアがシリア戦に参加した数日のうちに米国と繋がっているサウジの聖職者とムスリム同砲団がロシアに対して「聖戦」を宣言したのは驚くに値しない。

元国防情報局長マイケル・フリンはインタビューで、米はシリアでのISISの増長を許す意図的な決断を下したと述べた。2012年の国防情報局の機密解除になった報告書では、もし米とその同盟国らが過激派反政府威力に武器を支給することでシリアを不安定化し続ければ「シリア東部で宣言された、または宣言なしにサラフィストの領土が打ち立てられ...これこそがシリア政府を孤立させるために、反対勢力を支援している国々が望んでいることだ。」と予測している。

CIAは数千名の「反乱兵」を訓練したが、彼らはISISと戦うために訓練されたのではなく、アサド政府とシリア国軍と戦うためにである。ワシントンポスト紙は、「...CIAは2013年より1万人ほどの反乱勢力をアサドの軍隊と戦うために訓練した。これらの集団はアサドの宗派であるアラウィ派の拠点に顕著な進撃を遂げた。」と報告している。これは、米のシリアでの底意が政権交代であり、そのためにはテロリスト集団を発生させる用意があることを示している。

ロシアは実際にテロリズムと戦うことでより多くを得る

それと比べて、ロシアはテロリズムからシリア国家を守ることに明確な地政学的利益がある。シリアは数十年間ロシアの同盟国であり、ロシアの地中海での唯一の海軍基地がある。ロシアの外務大臣ラブロフは、ロシアがシリアに介入するのはこの国が「もうひとつのリビア・シナリオ」となることを防ぐためだと述べた。言い換えれば、米がリビアにしたように、シリアが破綻国家になることを防ぐということだ。

さらにいえば、ロシアがテロリズムと戦うことは自国の安全保障に直接繋がっている。ロシアは自国の国境内、特にチェチェンで過去にテロリズム問題を抱えていた。シリアでISISに参加したチェチェン戦闘員が今やモスクワ政府に戦闘を仕掛ける恐れがある。シリアのアルカイダ一派であるヌスラ戦線もまた、ロシアへのテロ攻撃を呼びかけている。60ミニッツでのインタビューでロシア大統領ウラジミール・プーチンは、シリアでテロリストと戦ったほうがロシアに戻ってくるまで待つより良いと語った。

テロリズムはロシアの国家安全にとって、米国にとってよりも、より大きなリスクをもたらす。距離的に近いというだけでなく、ロシア内のテロリストは国家の一部を分断し、ロシアの街々を丸ごと制圧する潜在的な力がある。このような恐れは米にはない。米にとって国家安全への唯一のリスクは、爆弾で一般市民が死亡するということで、これは米政府が本当の「問題」とはみなさないであろう。むしろ、このようなリスクは好機にすらなる可能性があると見られている。

米はISISを封じ込めることのみを求めている

NATOに所有されたメディアの派手な宣伝を無視して、米の政策立案者の発言に耳を傾ければ、米の目的はISISを打ち負かすことではなく、シリアとイラクの国境内に恒久的に封じ込めることであることがわかるであろう。このことは、現、米政府の一員で、民主党代表のアダム・スミスも認めている。彼はCNNで、

「...我々がISISを封じ込めるのを助ける、シリア内で協力できるパートナーを見つける必要がある。だから、最良の作戦を考え出すのは難しい課題だ。かれらはシリアの各地に安全な隠れ場所を持っているが、これらがISIS封じ込め作戦の一部となることに賛成だ。」と述べた。
米議会、諜報委員会代表の議長、デヴィン・ヌーンズは、CBSニュースに、「我々はISISをイラクとシリアの領土内に封じ込めていると思う。それ以外のことはあまりしていない。」と述べた。

米大統領のバラク・オバマ自身も、彼は「...ISISの影響の及ぶ範囲と、その効果、その資金、その軍事能力が、管理ができる問題となるまで減少し続けること」を望む、と述べた
これは、オバマ大統領がISISの影響範囲を、治療はしても完治することのない病気のように、管理できる領域に封じ込めておくことを望んでいることを意味する。オバマは多分この政策をブルッキング・インステイチュートのアドバイスによって採用したのであろう。このシンクタンクは、

「ISISを打ち負かすべきか?打ち負かすより、破綻国家または破綻寸前の国家の中で彼らの活動を封じ込めておくのが、しばらくの間、最も良い選択肢である。」と述べている

米はISISを実際に爆撃してはいない

米のISISへの爆撃はほとんど形だけのもので、認識管理として行っている。米軍は定期的に特定の標的を爆破したと発表するが、その爆撃の証拠ビデオが掲載されることは殆どない。それと比べ、ロシア軍は定期的に殆どの爆撃のビデオをロシア・トゥデイに載せている。米軍の発表を額面どおり受け入れる理由はない。事実を見れば、米はたとえ、機会があったときですらISISを爆撃することを拒否していることがわかる。漏洩した書類によれば、米は戦闘パイロットがISISの訓練キャンプの長いリストを攻撃対象とすることを禁じた。これらのキャンプからは月に数千の戦闘員が輩出されている。

受賞暦のあるジャーナリストのロバート・フィスクは、オーストラリアの番組レイトラインで、米はパルミラを占拠するために搬送されているISISの戦闘員を爆撃することができたが、その代わりに彼らがシリアの軍事拠点と、この、現在彼らが破壊を始めた古代都市を占拠するにまかせた。同じように、米はシリアの北ハマ地方で、ISISとアルカイダを標的として爆破することを殆ど避けていた。シリア軍がこの地方で優位になることを防ぐためである。ロシアはいまや、米からなんのお咎めも受けずにいたものたちを標的として爆撃している。米は、ISISが運営する地域に爆弾を落としたときには、これをシリアの石油施設を破壊する機会として利用した。
米は対アルカイダ戦争を「忘れて」、今やこれを保護している 

シリアの対テロ戦にロシアが参加したことで、最も皮肉な展開は多分、米政府とそのメデイアがロシアのアルカイダ(ヌスラ戦線)標的爆撃に激怒したことだ。元、国家安全保障問題担当顧問ズビグネフ・ブレジンスキーは、アルカイダの創出に多くの責任を負う人物だが、ロシアがISISだけでなくアルカイダも標的にしていることに対して、ツイッターで苛立ちを表した。NATOよりのメディアは米の対アルカイダ戦争を忘れ去り、昨年はシリアでのアルカイダの存在についていっさい触れず、ISISのみに焦点を当てることを選んだ。

2015年時点で、グーグルニュース・エンジンで、ISISは2億1千9百万ヒットしたが、アルカイダは3百万ヒットのみであった。この潮流に合わせて、NATOよりメディアは、ロシアがアルカイダを爆撃していることに光を当てることを避けた。この事実を暴露することは、米が反乱勢力と共に戦っていたときに、アルカイダに対して何もしてこなかったことを浮き彫りにする。

CNNの記事ではロシアがISISではなく、「シリア反政府勢力」を標的にしていることを糾弾していたが、掲示された戦争研究学会からの2枚の地図は多くを語っている。一つ目は、ヌスラ戦線が単独で、またはヌスラの同盟で、米の支援を受けている、いわゆる穏健派反乱勢力と合同で支配下に置いているシリアの地域が示されている。しかし、次の地図でロシアが攻撃している場所を示したものでは、ヌスラ戦線の占領地は殆ど見えず、共同で支配している地域に関しては完全に削除されていた。ヌスラが支配している地域は、ロシアの高度に集中した爆撃で妨害され、このことはロシアがこのテロリスト集団を撲滅させる意志があることを示しているにもかかわらず。

この2枚目の地図が、アルカイダが共同で占拠している地域を示しもせず、アルカイダの存在をはっきりと示していないのは、ロシアの対アルカイダ戦を特に取り上げないようにしていることを意味する。 なぜそうするのかといえば、米がCIAの支援する反乱軍のかなりを占めるアルカイダに対し、米がロシアと比較して、何もしてこなかったことを伏せておくためだ。これはまた、ロシアはいわゆる「穏健派反乱軍」のみを標的にしているというNATOの主張にも合致する。米はロシアが、米と繋がっているアルカイダを攻撃したことに憤慨し、それをやめさせるために、ロシアは「良い側の人間」を爆撃しているという図式を描こうとしているのだ。

米はテロリストに資金と武器を供給し続けている

この地図はさらに、米に支援された「穏健派反乱軍」がアルカイダと共同で活動している、というすでに広く知れ渡っている事実を描き出している。元米シリア大使のロバート・フォードもマックラッチーニュースで、これらの反乱勢力がアルカイダを支援していたことを認めた。近頃、いわゆる「自由シリア軍」の16分隊の「穏健派反乱軍」が、ヌスラによる、アレッポのクルド人の町、シェイク・マクスードのへ攻撃に参加した。
米政府から「穏健派」のラベルを貼られた反政府グループの司令官らは、過去、ISISと共に戦いすらしたし、彼らがISISを支援していることを衛星放送ニュースのインタビューで繰り返し述べている。NATOよりのメディアは、これらの反乱勢力を「比較的穏健な」と呼ぶほどまでになった。アルカイダとISISと比較して、という意味だ。どちらにしろ、「穏健な」というのは非宗教的(Secular)という言葉とは違い、常に相対的な言葉である。そして、NATO運営メディアは、これらの反乱勢力を「非宗教的」と形容することはいくらなんでもしない。先週米国は、反乱勢力をISISと戦うために訓練をするという国防省のプログラムを打ち切った。というのも、5人を除く全員が、与えられた訓練と武器と共にアルカイダに寝返ってしまったからだ。

米国が過去に行った、「審査された反乱軍」に武器を供給する試みは、TOW対戦車ミサイルがアルカイダの手に落ちるという結果に終わった。しかし、「穏健派反乱勢力」が存在しないことを認めて過激派反乱軍への不法な武器供与をやめるかわりに、米政府はアルカイダと親密な関係にある「定着して名の知られた反乱グループ」を公に支援することを選んだ。米は現在、またTOWミサイルを、同盟国のサウジアラビアを通して、これらの過激派グループに輸送しようとしている。

アルカイダは、米が武器を供与していることで責められている唯一のテロリストグループではない。 今月、ISISに占拠された石油精製所を、イラク軍がビデオ撮影した映像には、米がイスラム国戦闘員にパラシュート落下で届けた木箱いっぱいに詰められた食物や武器が映されている。2014年にはまた、米の、シリアのコバネにいるISISへの供給投下物の映像がインターネット上に掲載された。

たった数日前、米は50トンの弾薬をシリアのハサカ地方に空中投下した。この地方は部分的にISISが占領運営している。殆どのISISが使用する武器は米国製である。今年1月に、イラクの国会議員、マジッド・アル=グラウィが、空中投下によって米がISISに武器を供給していることを公的に非難した。

イラクは対テロリズムの実戦において、米よりロシアをより信頼している

イラク政府は、ISISとの戦いで、米が実質的な関与をしていないことに対して疑いを深めている。その一方、ロシアのISIS爆撃がとても効果的だったことから、イラク政府はロシアに、対ISIS戦で米国よりも大きな役割を担うことを要請した。ロシア側は、イラク政府の許可の下に、シリアと同時にイラクでもISISへの爆撃を開始することを示唆した。

ロシアは米国とは違い、イラクとシリアのそれぞれの正当な政府の許可を得て両国に侵入したことから、国際法は破ってはいない。これらの介入によって、ロシアは米国の対ISIS戦がはったりであり、イラク政府に米国が真にISISと戦っているのだと納得させるには、より多くをなさざるをえない状況に陥れた。

米国は、この地域の多くの国が、ロシアの航空機が領空を飛ぶことを禁止するよう圧力をかけてきたが、もしロシアがイラク領空を飛行できれば、より簡単にシリアの領空に横切って入り、シリア政府に補給物資を提供することができる。それだけでなく、もしイラクがロシアに介入を要請すれば、米国が2003年以来の長期にわたる占領で得たイラクでの影響力が弱まるシナリオとなる。

米国は窮地に追い込まれ、それによって自国とその同盟国らが、テロリズムに対する真の挑戦者ではなく、その源であることを暴露した。テロリズムは常に米国がロシアの影響力を分解しようとするときに用いられる手段であった。皮肉なことに、過去10年の間に、実際に対テロ戦を行っているのだという神話を恒久化させることにもなった。しかし、同盟の国々が、このゲームに疲れを深めている今、米国はいつまでこの二枚舌を操ることができるのだろうか。全てのトランプカードが崩れ落ちてしまうまでに。

マラム・ススリ(Maram Susli) は「シリアン・ガール」としても知られており、シリアと広範な地政学のトピックを扱う活動家ジャーナリスト、社会評論家である。オンライン・マガジンのニュー・イースタン・アウトルックに多くの記事を掲載している。この記事は最初に、http://journal-neo.org/2015/10/20/why-russia-is-serious-about-fighting-terrorism-and-the-us-isn-t/ に掲載された。

2015年9月3日木曜日

米国がシリアを打倒するためにアルカイダを「使用」したことが立証された

以下の文はランドデストロイヤー・レポートに2015年9月2日に掲載されたトニー・カルタルッチによる Confirmed: US to "Use" Al Qaeda to Take Syria を訳したものです。(アクセス9月3日)
 http://landdestroyer.blogspot.com.au/2015/09/confirmed-us-to-use-al-qaeda-to-take.html

(注:原文の写真とその説明は除かれています。) 

2007年以来報告されていたことが米軍指導層の高官によって確認された。米国はアルカイダを養成し、今や公にそれを使ってシリア政権の転覆を図っている。

デイリービーストに掲載された「ぺトレイアスはISIS打倒のためにアルカイダ戦闘員を使う」という記事は「安全避難区域」または「緩衝地帯」パズルの最後の一片を明らかにし、完成図を知らしめることとなった。米国がトルコ、サウジアラビア、イスラエル、ヨルダンその他の地域同盟国と共に、今度こそダマスカス政府を転覆させ、国家として機能するシリアを抹殺するためにテロ団体のリストに載っている10年に渡る破滅的な世界中での紛争に責任のある者らを使うという計画だ。

デイリービースト・レポート

シリア内のアルカイダ支部のメンバーにはアメリカの権力の回廊に意外な擁護者がいる。引退した陸軍大将で元CIA長官であったデヴィッド・ぺトレイアスである。
イラクとアフガニスタンの元米軍司令官はひそかに米高官らに、アルカイダのヌスラ戦線のいわゆる穏健派メンバーをシリアでのISISとの戦いに使うことを考慮するよう促している。これは彼と直接話した者も含める、この会話について知っている四つの情報源がデイリービーストに語ったことである。

 デイリービーストは、ぺトレイアスの計画とされているものに加え、元米国シリア大使であったロバート・フォードもアハラール・アル・シャム(アッシャム)派を含むアルカイダと直接繋がっているテロリストを支援することを提唱していると報告している。ただ、この「提案された」支援は事後の補足に過ぎず、大衆の認知管理でしかない。というのも、アハラール・アル・シャムやヌスラ戦線のようなテロ組織はすでに米国の顕著な支援を直接、またはこの地域の多くの協力国のひとつを通すことで出所を隠しながら与えられてきたからだ。

アハラール・アル・シャムのインターネット上の多くのビデオ記録は、このグループが米の対戦車TOWミサイルをも用いていることを示している。さらに、米企業・投資家が資金を出しているブルッキングス研究所などのシンクタンクはすでにこの計画そのものを数値化している。 ブルッキングスの「混沌から秩序へ」というブログに最近掲載された「米国はテロリストと交渉すべきか」と題する発行物には、

軍事展開に消極的であるならば、最終的には過激派との交渉と恩赦プログラムが米国の対テロリズムのレパートリーに取り入れられるべきである。
とある。


 ブルッキングスはぺトレイアスとフォードが提案したことを殆どそのまま一字一句書き表している。このことは、この計画がデイリービーストで示されたよりもより深く政策として根を下ろしていることを意味する。

これは初めからある計画だった

実際、デイリービーストの衝撃的な事実承認は真実の全てではない。米国は2007年にさかのぼるころから代理戦を行う目的で、シリアのムスリム同胞団、アルカイダその他の強硬派閥主義武装団体を使ってシリアを武力によって転覆させ、最終的には直接、対イラン戦を行うことを企てていたというのが事実だ。
ピューリッツァー 賞受賞ジャーナリスト、シーモア・ハーシュの2007年のニューヨーカーの文「方向転換:政府の新しい方針は対テロ戦争で敵を利することになるか?」では、それが明確に述べられている。(文字に強調が加えられている)

大多数がシーア派であるイランを弱体化させるためにブッシュ政権は中東での優先順位を実質的に再編成することを決めた。レバノンではこの政権はイランに支援されたシーア派の組織ヒズボッラーを弱めることを目的とした極秘作戦でスンニ派であるサウジアラビアの政府と協力した。米国はまた、イランとその同盟国であるシリアを狙った極秘作戦にも参加した。これらの活動の副産物は、イスラムの好戦的な見方を信奉し、アメリカに敵対的でアルカイダに共感するスンニ過激派を増長させたことだ。 

これに加えて、米国に本拠を置き政府の「透明化」を求めるジュデイシャル・ウオッチが2012年に発表した7ページの文書はシリア紛争の背景と情勢について詳しく述べている。そこではシリアの「反政府勢力」の基盤をなすのがムスリム同胞団とアルカイダであることが認められている。そして次のことも認めた。(文字に強調が加えられている)

現在起こっていることは代理戦争へと発展した。ロシア、中国とイランに支援されたシリア政府は勢力範囲の沿岸地域(タルトゥスとラタキア)を支配下に置き、シリアの主要輸送ルートであるホムスで激しい攻防を行っている。もう一方の反乱勢力はトルコとの国境地帯に加え、東部地域(ハサカとデル・ゾル)、西イラク地方と隣接している地域(モスルとアンバー)を支配下に置こうとしており、これを西欧諸国、湾岸諸国とトルコが支援している。

この文書はテロリストがイラクからシリアに入ってきており、いわゆる「内戦」などというものではなく明らかに侵略であるであることも認めている。さらに重要なのはこの文書が次のように認めていることだ。(文字の強調が加えられている)

反政府勢力はイラク国境地帯の人々が共感していることをいいことにイラクの領地を安全避難場所として使おうとしている。イラク領土内で(シリア)難民をかくまうのに加え、戦闘員のリクルートと訓練もしている。

もしもシリア東部(ハサカとデル・ゾル)に宣言されたまたは宣言なしのサラフィスト統治国が成立する可能性があるという状況が明らかになったとすれば、それこそが反対勢力を支援してきた大国らがシーアの拡張(イラクとイラン)の戦略的縦深であるシリア政権を孤立化するために望んでいたことなのだ。

これはアメリカとその同盟国がアルカイダをシリアとイラクと戦う代理として使うことを望んでいたというだけでなく「サラフィスト統治国」を特にシリア東部に作ることを望んでいたことを明らかにした。現在「イスラム国」が存在するのと全く同じ場所である。

デイリービーストの記事はこの立証された陰謀の最新の確認であり、アルカイダの養成と使用、そしていわゆる「イスラム国」(ISIS)が、西欧の直接軍事介入では成功することができないシリア国家転覆を非正規非対称戦争で行うための、あらかじめ塾考された作戦であったということは殆ど疑いの余地がない。

ISISに空軍を与える

デイリービーストの読者はこれらの過激派がすでにずっと西欧諸国から武器を与えられてきたという事実を知らずに、米国が彼らに武器を与え始める、またはすでにある支援を増やすのだと思おうとするであろう。しかし、これらの思い込みは両方とも間違っている。米国とその協力国らがシリアの紛争につぎ込むためにこの世で見つけることのできるすべてのドル、すべての武器、そしてすべての外国人戦闘員はすでに調達され、シリアに送り込まれている。単にそれが十分でなかったということだ。

そしてリビアでNATOの地上軍、実質的には米国がリストに載せている外国テロリストグループの「リビア・イスラム闘争グループ」(LIFG)が彼ら自身で極秘支援のみでこの国を獲得できなかったときと同じように、代理地上軍が結果を出せなかったときに取りうる唯一の選択肢は彼らに上空援護、特別軍作戦、海軍支援、信号と諜報網を含む直接軍事援助を与えることだ。

リビアではNATOの空軍力使用が紛争のバランスをアルカイダのLIFG派に決定的に有利に傾け、ついにトリポリの政府を打倒するに至った。以来この北アフリカの国はこれらの過激派の手に委ねられている。

リビアは米国とNATOがシリア自体を含む中東と北アフリカの国々を侵略するための跳躍台として機能することになる

シリアでの欧米の地上代理軍は軍事作戦能力に限りがあり、いまだに究極の目的であるシリア政府の打倒は達成されていない。欧米が今やより直接的な介入を準備していることは明白だ。シリア内で戦っているISISとアルカイダ軍に動力を供給するための最終的な後方回廊地帯がシリア北部にすでに「安全避難地域」または「緩衝地帯」として指定されている。欧米はこの地帯が難民と「穏健派」戦闘員のための保護区域として使われると主張しているが、デイリービーストとブルッキングスの報告書により、そのような「穏健派」が存在しないことは明らかだ。そのかわりにこの「安全非難地域」は米国、NATO、ペルシャ湾岸の空軍力と特別部隊に保護された、アルカイダ/ISISの最後の避難場所として使われることになる。

そこから実質的に飛行禁止区域となるものが南方に拡大されて、これらのテロリスト軍が何年も続いている紛争に最終目的であるリビア型のフィナーレをもたらすため、より効果的により深くシリア地域に入り込んで作戦を行うとき、彼らに保護を提供することになる。

つまり、米国とその同盟国らはアルカイダ/ISISに紛争のバランスが彼らに有利になるよう空軍を提供する準備をしているということだ。
ISISプロパガンダは世間がアルカイダを好ましく思うように仕向けられている。

米国とサウジアラビアは1980年代にアルカイダを当初彼らのために代理戦を戦う同盟勢力と考えていた。最初がアフガニスタンで対ソ連、過去十年はこのテロリスト組織を直接の代理ではなく世界規模の軍事紛争の口実として使って民衆の認識を悪化させた。アルカイダを再び「自由の戦士」に配役しなおすためにISISは意図的に自らを今まで地球上に存在したももののどれよりも過激で残虐であると描き出すためのプロパガンダ・キャンペーンを仕掛けたと思われる。
これには多くの資金をつぎ込みプロの手で製作された今までになくクリエィテイブな、しかしISISの捕虜となった者らに対する恐るべき残虐行為を映し出している製作物を含む。これにはまたローマ寺院などのシリアの歴史的遺跡の組織的で悲劇的な破壊とそれらを研究し保護していた尊敬されていた歴史家の処刑をも含んでいる。

ISISは世間を彼らに敵対させるべく意図的に挑発する努力をし、それによってアルカイダを比較的「穏健派」へと再配役する手助けをした。欧米のメディアはISISの明らかなプロパガンダ・キャンペーンと並行してそれを助けようとした。すでに言及したブルッキングス・レポートは以下の内容を主張するほどだ。

戦略的レベルでは米国はマッチョの信条である「我々はテロリストと交渉することはしない」を堅持  している。9・11にツインタワーが崩壊した後の敵意が満ちていた対テロリズム世界戦争の頂点   だったころにはこの立場は気高く正しかった。しかし14年が過ぎた現在9月11日の残虐行為を   実行したアルカイダはアイマン・アル・ザワヒリと数名の残存する信奉者ら意外に殆ど存在してい  ない。減少しているアルカイダ系列団体数はこれらの攻撃を行った元々の実行者たちとの結びつ  きが少なくなっていることを示している。

2001年9月11日に3千人近くが米国の地で殺された。その後、この攻撃とアルカイダの「脅威」に基づいた戦争で1百万人ほどのイラク人が死亡し、何万人ものアフガニスタン人、そして4千人以上の米国とその他の同盟国兵士が10年以上に渡った世界戦争で殺された。運輸保安局(TSA)の創設と、アメリカ人一般大衆に対して課される範囲と介入度を増す安全方策もまたアルカイダの脅威を前提としている。

アメリカ中でこの世界戦争が生んだのは蔓延するパラノイアと放って置かれている帰還兵の破壊された身体と心、そして一見無害で存在しない脅威と戦うために人々と資源が奪われてきた国だ。米国は現在これを機能する常備軍にし、中東・北アフリカ地域中で国をひとつずつ占領する手助けをする準備ができている。

10年以上にわたって海外の国々とアメリカ人民自身両方に対して行われた残虐行為は一周して元に戻ってきた。米国が「対テロ戦争」を正当化するために当時挙げていた敵そのものから地域の戦線を創設するという陰謀は現在完全に実施に移されている。これは二つの大統領政権を超えた陰謀であり、アメリカの外交政策が選挙で選ばれた代表を通してアメリカの民衆の願望によって動くのではなく、選挙で選ばれることのない特殊権益によるものだという証拠であり、彼らがどのような筋書きにでも誘導して政策文書を書き、それがいつでも実施されることになる。

ブッシュ政権の時にはこの筋書きは「対テロ戦争」であり、オバマ政権の時には「人道主義戦争」である。実際は単一の継続する課題が途切れることなく現在まで進んできた。また今年も9・11記念日を迎えようという今、米メディアはアメリカの民衆と世界の一般の人々にアルカイダは「いいやつ」で、シリア国家を彼らの手に委ねさせるときが来た、と説得しようとしている。




2015年2月11日水曜日

サウジアラビアはシリアの反政府軍に囚人を強制徴用するという戦争犯罪を犯している。

以下は2015年2月8日にグローバルリサーチに掲載されたクリストフ・リーマンの記事の訳です。
Saudi Arabia commits War Crime by Forced Use of Prisoners in Syria Insurgency
このレポートは最初2012に掲載され、サウジがイスラム国(ISIS)を含むシリアの聖戦主義テロリスト反乱勢力を支援していることに光を当てた。
サウジアラビアの公式の極秘書類は、サウジ政府が死刑を言い渡された最も凶悪な囚人をシリアでの政府転覆活動に加わることを条件に釈放したことを暴いた。この行いは重大な戦争犯罪である。2012年のより早い時期にプレスTVとアル・アラムのジャーナリスト、マヤ・ナセルがトルコ当局が同じ犯罪を犯していることを調査し始めた直後に暗殺された。


その公式の極秘書類はサウジアラビアの当局者が死刑を宣告された最も危険な犯罪者のグループがシリアで戦闘をすることと引き換えに釈放されることを命じたことを示した。シリアに派兵される前にこれらの囚人らは不正規戦、テロリズム、または歪曲的に聖戦と表現されるものの訓練をすることになっている。

この囚人グループは以下の国籍を持つものを含む。イエメン105人、パレスチナ21人、サウジアラビア212人、スーダン96人、シリア人254、ヨルダン82人、ソマリア68、アフガニスタン32人、エジプト194人、パキスタン203人、イラク23人、クエート44人。サウジアラビアからこのように派兵される囚人グループはこれだけではない可能性が大きい。

サウジアラビアが死刑囚を釈放して反乱軍に強制徴用したことは、戦時の文民と戦争捕虜の権利を特に規定するジュネーブ条約の重大な違反である。

このシリアへの派兵は囚人の強制徴用である可能性が高く、サウジ政府がハーグの国際刑事裁判所で追訴されうるものである。

米国特殊部隊の訓練回覧TC 18-01によれば、見通し得る将来において米軍は主に非正規戦に従事することになる。(1)第二十五回NATO首脳会議後NATO原則は、リビアへの不法な戦争を学ぶべき重要な機会で将来の介入モデルであるとし、この傾向に裏打ちされている。(2)このことから反シリア同盟のうちサウジアラビアだけが囚人を派兵しているのではないことは驚くに値しない。

2012年9月にプレスTVとアル・アラムのジャーナリスト、マヤ・ナセルがダマスカスで2発の爆弾爆発現場をレポートしている最中狙撃者に撃たれて死亡した。信頼できる筋によれば、その狙撃者たちは爆発が起こる2時間前からそこに配置されていた。マヤ・ナセルを狙っていた可能性はかなり高く、起こった日時は偶然ではない。

マヤ・ナセルは殺された同じ週、トルコの囚人強制徴用について調査をしていた。ナセルはシリアで殺された、または捉えられた数名の反政府戦闘員がトルコの刑務所で拘禁されているべき刑を言い渡されていたことが判明してからその調査を始めた。(3)ナセルはこれを立証するいくつかのパスポートのコピーを持っていた。

殺された、または捕らわれたトルコの囚人らはアルカイダと連携した組織と繋がっていた。これらの囚人反政府戦闘員のうちでも突出しているのは、2003年HSBC爆破犯人のリーダーの弟だ。この2003年イスタンブールHSBC銀行爆破では67人が死亡し700人以上が負傷した。サウジの書類はサウジアラビアとトルコでの囚人強制徴用が孤立した事件ではなく、GCC(湾岸アラブ諸国協力理事会)とNATOの戦略の一部であることを示している。

マヤ・ナセルが提供した証拠とサウジアラビアの書類は、国際刑事裁判所(ICC)がトルコとサウジアラビアそしてNATOを調査し訴追することを正当化する。

しかし、ある戦争犯罪が調査され訴追されるかどうかはまったく不確実だ。ただ言えるのは欧米の国々のひとつが調査と訴追を要求することはほとんどありえない、ということだ。そしてロシアと中国両国はすでに緊張を伴うロシア、中国と米、英、仏との二国間と多国間の関係を考慮するであろう。現在非同盟運動の議長国であるイランは米、カナダ、EUそして湾岸アラブの隣国らから圧力をかけ続けられている。テヘラン政府は欧米との外交関係を悪化させるリスクをとることの二の足を踏むであろう。

つまり、ローマ規定から10年間、米国、EU, NATOの覇権にあえて異を唱える国家元首や政府高官のみを訴追し、拘禁し、刑を科してきた国際刑事裁判所(ICC)がトルコ、サウジアラビア、NATOの粗暴なジュネーブ条約破りと囚人強制徴用、そして国家支援テロリズムを取り上げることはないということだ。

もしこの記録書類が欧米の主流メデイアで取り上げられるとしたら(そのようなことは多分ないであろうが)半端な醜聞となって自分たちの犯罪を正当化し、隠蔽するという露骨な目的のもとに、誰かに罪を着せたり地位を変えることに利用されるだろう。これが調査と訴追、または国家支援テロリズムや囚人の強制徴用を終わらせることには決して結びつかないであろう。

2015年1月25日日曜日

米国はISILに寝返るであろう5000人に上る戦闘員を養成している

以下はオンライン誌ニュー・イースターン・アウトルックに2015年1月16日に掲載されたトニー・カルタルッチの US is Preparing up to 5k Militants That Would Flee to ISILの訳です。

 http://journal-neo.org/2015/01/16/us-is-preparing-up-to-5k-militants-that-would-flee-to-isil/
by Tony Cartalucci  16.01.2015 (アクセス1月24日)


近頃欧米のメデイアの片隅に、3000人あまりの自由シリア軍「穏健派反政府勢力」 が「イスラム国」(ISIS)に寝返ったという報道があった。いわゆる「穏健派」が公然とアルカイダまたはISISに転向するのはこれが初めてではないが、今回のはいままであったなかでも特に規模が大きいもののひとつだ。


サウジアラビア、カタール、アメリカ、イギリス、そして中でもとりわけ皮肉なのは最近テロ攻撃のあったフランスらによってこれらの3000人に与えられてきた武器、現金、装備そして訓練が彼らと共に「イスラム国」に渡ることとなる。この裏で行われている「テロ・ローンダリング」ネットワークの規模は大きくなる一方であり、ISISとアルカイダの兵員数は膨張し続けているのだ。

この陰謀はピューリッツァー賞を受賞したセイモア・ハーシュの2007年の記事「方向転化:政府の新しい方針は対テロ戦争で敵を利するものか(The Redirection: Is the Afdministration's new policy benefiting our enemies in the war on terrorism?)」によって暴露されて人々の知るところとなった。この記事は米国とその地域の同盟国らがアルカイダや他の過激派を使ってイラン、シリアそしてレバノンのヒズボッラーへの代理戦争を仕掛けようとしているというものだ。この陰謀は現在ISISという形で明らかに具現されている。ISISに対する見せ掛けの軍事作戦で主にシリアの石油施設を標的にしているが、ISISの兵力の真の源であるNATO領域内のトルコは無傷のままで放っておかれている。さらに、大量の現金、武器そして援助物資がいわゆる「穏健派」が御旗の下に移行することによってISIS兵団になだれ込んでいる。

この旅団規模の離脱が起こる前に、その他のいくつかの「審査された穏健派の反乱軍」グループ、特に米国から武器を供与されたものらは公にアルカイダに忠誠を誓っていた。最も悪名高き事件は、米国から対戦車TOWミサイルを供与されていたテログループのハラカット・ハズムがアルカイダのシリアでのフランチャイズで米国務省が外国テロ団体のリストに乗せているアル・ヌスラに公に忠誠を誓ったことだ。

アル・ヌスラはTOWミサイルを手中に収めシリアのイドリブ県での成功裏に終わった軍事作戦でそれを使用したとされている。

デイリービーストは2014年9月の記事「アルカイダのシリアでの策謀者が’失踪’と米スパイ述べる(Al Qaeda Plotters in Syria 'Went Dark,' U.S. Spies Say)」で以下の報告をした。

以前米国に支援を受けていたシリア反乱軍のひとつは火曜日の空爆を非難した。春に米国から対戦車兵器の積荷を受け取った反乱軍ハラカット・ハズムはその空爆を「国家主権への攻撃」と言い、外国が主導する攻撃はアサド政権を強化するだけだと非難した。この声明はインターネット上で流布されたグループのものとされる文書にもとづいており、シリア紛争モニターというトゥイッターアカウントにその英訳が投稿されている。ブルッキングスのドーハセンター、チャールス・リスターなどのシリア専門家数人は、この文書が本物と信じている。

この正式な声明がなされる以前にハラカット・ハズムには米国のパートナーという役割と相克をきたす同盟関係をシリアで結んでいた形跡がある。9月の初旬にハラカット・ハズムの要員はL.A.タイムス紙のレポーターに、「シリア内では我々は世俗主義者というラベルを貼られ、ヌスラ戦線が我々に戦闘を仕掛けてくることを恐れているとされている..しかしヌスラが我々と戦うことはない。実際、我々は彼らと共に戦っているのだ。我々はヌスラが好きだ。」と語った。(デイリービースト紙)
  
このグループは後、欧米の新聞でアルカイダに「降伏した」と報告された。インターナショナル・ビジネスタイム紙は「シリア:アル・ヌスラ聖戦主義者らが’米国のTOW対戦車ミサイル’を穏健派反体制勢力から捕獲」という記事の中で次のように述べた。

米国がシリアの穏健派に供与した武器は、対抗するグループ間(穏健派とアルカイダと連携する聖戦主義過激派)の衝突後に後者の手に落ちたと懸念される。

アル・ヌスラ戦線のイスラム主義戦闘員は、その週末、米国が支援するシリア革命戦線(SFR)とハラカット・ハズムを完敗させて、イドリブ県のジャバル・アル・ザウィヤの広大な領土を掌握した、と活動家は述べた。


米政府はSFRとハラカット・ハズムがISIS(イスラム国)過激派にシリアの地上で対抗し、米の空爆を補足することに依存していた。(インターナショナルビジネス紙)  
                                                           
しかしハラカット・ハズムの「降伏」は明らかに、アル・ヌスラとの強まる同盟関係の単なる仕上げでしかない。

米国はまた別の旅団をISISのために準備

「穏健派」がISIS兵団に加わることが避けられない運命のように見え、米国の兵器がアルカイダの手に落ち、全旅団規模の離脱が行われているときに、世間が最も考えられないと思うのは米国がまた別の旅団サイズの軍団に武器を与え、資金を供給し、訓練を行ってからシリア国内で野放しにすることではないだろうか。しかし、それこそが米国が計画していることなのだ。

スターズ・アンド・ストライプ(星条旗)紙は「米国がシリアの反乱軍をトルコで訓練するという合意に達した(Agreement reached for US to train Syrian rebels in Turkey)」という記事で以下の報告をした。

当局者は、初期段階の訓練で約一年内に5000人の熟練した自由シリア軍兵士を養成すると述べた。サウジアラビアは9月に、シリアとイラクの領域を支配しているイスラム国武装勢力と戦う米国の戦略を支援するために穏健派シリア反乱軍の訓練を主催することに同意した。

米国の自由シリア軍への支援は米国がシリアでより大きな介入をすることを支持する者たちから、とぎれとぎれであることを批判されてきた。そしてここ数週間で自由シリア軍は他の反乱軍でアルカイダと連携するヌスラ戦線の兵員に侵略され基地から追放されて敗北を喫した。

ただ、この「自由シリア軍」は先ほども記したように、アル・ヌスラに侵略されて追放されたのではなく、これらのグループの多くは長期にわたって続いているアルカイダ下部組織との同盟の一部をなしており、欧米からの武器、現金、訓練ごと持っていったことで、それが単に公になっただけだ。
米国が説得力のある反証を提示することは、2007年の時点ですでにアメリカがアルカイダを代理軍隊として使用することを望んでいたと暴露され、知られていることから不可能である。ハラカット・ハズムが米国の供与した対戦車TOWミサイルをアルカイダに受け渡し、今やいわゆる「自由シリア軍」戦闘員が旅団丸ごと規模でISISに転向する。アメリカがこの春から訓練を始める予定の新しい旅団には「大惨事」以外に何が降りかかるというのだろうか。

これらの戦闘員たち、そして彼らの援助物資と武器は不可避的にISISとアル・ヌスラの御旗のもとに集結されることになる。テロリズムがシリアで増大しているのはISISが油田と人質の身代金を支配しているからではない。それは米国とそのパートナーらが意図的に何千もの訓練された戦闘員と兵器と何十億ドルもの現金と装備品その他の援助物資をその胃袋に流し込み続けているからだ。

これらのテロリストがヨーロッパとアメリカに浸透し始めれば、シリアでのこの巨大なテロリスト事業を意図的に作り出すことに加担した利害関係を同じくする面々は、自国にある残り少ない文明が廃絶されることを嘆くだろう。彼らが他国で狡猾にそして意図的に文明を破壊したあとで。